いぬおさんのおもしろ数学実験室

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πの求め方を、流れだけ説明(2)

 前回、πを求めるためのライプニッツ級数を紹介しました。しかしこのライプニッツ級数は、がんばって計算しても細かな値まで求めるのは非常に大変なのです。1000項計算しても3.14までしか求まらないそうです。きれいな式ですし、理論的には十分なんですが実際にπを求めるにはこれではダメなんですね。1706年にイギリスの天文学者マチンは

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を示し、これを使ってπを100桁求めています。1706年のことですし手で計算したわけで、大変効率のよい求め方であることがわかります。arctan(1/5)の部分とarctan(1/239)の部分を別々にグレゴリーの級数で求めます。この辺、『π -πの計算 アルキメデスから現代まで-』(竹之内脩、伊藤隆2007共立出版)に詳しいです。マチンの公式を導くのは難しくありません。高校数学の範囲ですが、今回は説明抜きにしておきます。

π―πの計算アルキメデスから現代まで

π―πの計算アルキメデスから現代まで

 

  しかし、いざこの公式とパソコンを使って円周率を求めようとしてもすぐにつまるはずです。桁数の問題です。何かのプログラミング言語を使うわけですが、どの言語もたいてい、せいぜい10桁か20桁くらいまでしか扱えないのです。『パソコンで挑む円周率』(大野栄一1991講談社ブルーバックス)に方法が書いてあります。この本ではマチンの公式を使い、パソコンで円周率を求めています。ごく簡単に説明すると、変数をたくさん使って(実際には「配列」という仕組みを使います)小数第1位、第2位、第3位、……を表現するのです。つまりひとつの変数でひと桁分を表すようにするのです。プログラミング言語にもとからある+-×÷はそのままでは使えず、四則は自分で計算できるよう工夫しなければなりません。

パソコンで挑む円周率―πの歴史から計算まで (ブルーバックス)

パソコンで挑む円周率―πの歴史から計算まで (ブルーバックス)

 

  実際に100桁まででもいいから自分で計算してみれば身にしみて理解できると思うのですが、先延ばしにしています。いずれ。

 ウィキペディアによると2014年までで円周率は13.3兆桁まで計算されています。さすがにそうなると「いったい何の意味が?」と言いたくなるのは分かりますし、「無意味だ!」とバッサリ切り捨てる人だっています。しかし、「実生活に全く役に立たない」はずの整数論が現代の暗号に応用されるようになっていきなり必須の知識に格上げされたことを考えれば、もういったい何がどこでどう役に立つようになるかなど誰にも分からないはず。こうした事情を知っている人は簡単には「意味がない」とは言わないでしょう。